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動物園だより

動物園だより : NO.172

「楽しい動物園を目指して」

年の初めに
「楽しい動物園を目指して」


 今年は羊年。可愛らしく、気弱な動物に例えられるヒツジですが、頑固で攻撃的な一面があります。特に雄ヒツジの角のアタックは抜群の破壊力を持っています。人とのかかわりは深く、家畜として毛や肉用に多数の品種が産み出されています。

 さて、昨年は、雄アジアゾウのたいようとの悲しい別れがあり、雌マサイキリンのユメなどの動物たちが亡くなりました。一方、新しい誕生もありました。国内での繁殖例が10例にも満たないコフラミンゴが3年連続で今年も繁殖しました。年末には当園では初めてケープペンギンが繁殖しました。

 また、表彰も受けました。動物園をより良くしていくためには、来園者である市民の協力も不可欠だと考え「動物園を通して人と動物の関係を考える」をテーマとしているNPO法人市民ZOOネットワークから当園の取り組み「類人猿に対する環境エンリッチメントの取組と情報発信」が「エンリッチメント大賞2014」の奨励賞を受賞しました。
 動物たちが生活する上で変化に富んだ環境が好ましい。野生の動物は食事のため、繁殖のため、そして敵から逃れるため、常に体力と知力を使います。動物たちが健康に生活する源となります。これを引き出すために飼育係はいろいろと工夫をしています。
今回の受賞は、大掛かりな仕組みではなく手間とアイディアを出して、その効果を引き出したことにあると思います。例えば、一部の野生のチンパンジーはシロアリなどアリ塚に木の枝を突っ込んで、その木の枝に咬みついたアリを釣り上げて食べることが知られています。これを再現しました。多くの動物園でも試みられています。当園はアリ塚の建設費にお金をかけず、一枚のアクリル板をアリ塚に見立てました。柵に透明のアクリル板を取り付け、その板に穴を開けました。アクリル板の外側つまり観客側がアリ塚の中になります。そこにヨーグルトの入った容器を仕掛けて、チンパンジーには事前に木の枝を与えておきます。チンパンジーたちが、この枝を開いた穴に突っ込んでアリならぬヨーグルトを付けて食べるような仕掛けにしました。お客様は、チンパンジーたちの枝に工夫をする様子、枝を突っ込む様子、そして、群れのチンパンジーが枝を突っ込む順番を待つ様子が観察できます。
 この他にもチンパンンジーたちが食事するのにひと手間掛かるような仕掛けが用意されています。これを実施するのは毎日12時に時間を決めています。この時に大好きな果物を与えて説明も加えます。チンパンジーの果物の取り合い、譲り合い、取るための工夫。いろいろなチンパンジーに人間臭い個性が見て取れます。これを観たお客様はとても楽しそうに語らっています。

 こんな楽しい光景が多くありたいと思います。ゾウさんのお散歩、フライング・フラミンゴショー、トカラヤギの行進など、毎日のプログラムとして行っています。動物とお客様とが空間を共有し観ていただいた後、体験していただいた後、お客様から多くの会話が生まれています。きっと楽しい思い出になるのでしょう。
 楽しい動物園。この楽しさが野生動物への興味を生み、野生動物との共存の意識を育むのだと、私は考えています。今年も楽しい動物園になりたいと挑戦し続ける1年でありたいと思います。

 12月、宮崎に高病原性鳥インフルエンザが発生しました。動物園でもその予防対応として、フライング・フラミンゴショーなどの鳥のプログラムを中止し、一部の動物が観にくくなっています。野鳥由来の可能性が高いらしいとのことです。でも、野生の鳥たちを忌み嫌いたくはありません。人間の英知を持って、家禽も動物園の鳥たちも守る良い方法はないのでしょうか。5年前の県内で発生した口蹄疫以来、怯えながら考え続けています。またの機会に報告したいです。

宮崎市フェニックス自然動物園園長 出口智久 

平成27年1月1日