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動物園だより : NO.213

オランウータン「ハッピー」のプレゼント行動

オランウータン「ハッピー」のプレゼント行動



チンパンジーにニンジンを投げるハッピー


チンパンジーとオランウータンの展示場

 類人猿(るいじんえん)はヒトに最も近縁なサル類のグループで、外見上の一番の特徴はヒトと同じように尾がありません。ゴリラ・チンパンジー・ボノボ・オランウータン・テナガザル類がこの類人猿に含まれます。現在、当園ではチンパンジー15頭とオランウータン1頭を飼育しています。

 チンパンジーとオランウータンの展示場は、隣に並べて造られていて、ここで暮らしているオランウータンの「ハッピー」(♂・22歳)は、約6年前から、隣のチンパンジーの展示場に自分のあまり好きではない食べ物を投げてプレゼントするという興味深い行動を行っています。

 チンパンジーからの見返りは無く「ハッピー」が一方的にプレゼントをしています。このプレゼント行動は全国的な話題となったので、テレビなどで見た方も多いのではないでしょうか。「ハッピー」はなぜ隣のチンパンジーに食べ物を投げ込むのか?という質問が多く寄せられましたが、正直なところ「ハッピー」の本心は「ハッピー」本人に聞いてみないとわかりません。もしかしたら、飼育員が毎日のガイドイベントでチンパンジーに食べ物を投げて与えているので、それを真似て始めたのかもしれません。

 実際に、飼育員がチンパンジーに食べ物を与える時はオスのチンパンジーのプライドに配慮し、群れの順位の高いオスのチンパンジーに優先的に食べ物を与えるのですが、「ハッピー」も順位の高いオスのチンパンジーから食べ物を投げているのをよく見かけます。
また、チンパンジー達は「ハッピー」の展示場内に食べ物が残っていると、手をさし出したり手を叩いたりして、「ハッピー」に対して食べ物が欲しいことをジェスチャーで伝えます。「ハッピー」はチンパンジーの催促ジェスチャーの直後にプレゼントすることが多いようで、特に順位の高いオスのチンパンジーの催促ジェスチャーにはすぐに応じることが多いようです。


チンパンジーの催促ジェスチャー

 ヒト以外の他種間の動物がジェスチャーで意思を伝えようとし、それに的確に応じるという例は、動物園という飼育下環境で育んだ類人猿のもつ豊かな知性の表れではないでしょうか。
なんとなく観察すると「ハッピー」は飼育係の真似をしているとか、自分のきらいな食べ物を投げすてているだけに見えますが、「ハッピー」は明らかに隣のチンパンジーを見わけている、そしてチンパンジーの催促ジェスチャーの意図が分かっているようです。言葉の通じない動物の行動の意図を理解することは簡単ではありませんが、もっと深く観察していくとオランウータンの持つ豊かな知性、そして「ハッピー」が毎日行っているプレゼント行動の本心が見えてくるかもしれません。(飼育課 郡健一郎)                                         


ハッピーがチンパンジーにキャベツ・ニンジンを投げてプレゼント。